インド亜大陸西部のカンベイ湾に9500年前の都市が水没していた!
都市遺跡発見の意味
二〇〇二年一月七日の朝刊に「世界最古・九五〇〇年前の都市遺跡。インドで発見か」という記事がいろいろな新聞に掲載された。少なくとも読売新聞、日経新聞、産経新聞には掲載されていた。だがなぜか朝日新聞ではまだ見ていない(一月一九日現在)。
概略は以下の通りだ:
概略は以下の通りだ:
- インド西部のグラジャート州スラト沖で九五〇〇年前の古代都市の遺跡が見つかった。
- 発見されたのは二〇〇〇個以上の遺物で、木片、つぼのかけら、骨の化石、ビーズなど。
- 深さ四〇メートルの海底の砂の下に見つかった都市は二つで、古代の川に隣接している。
- その一つの都市は川に沿って九キロ、奥行きも二キロ以上あることが確認されているが、もっと大きい可能性が高い。
- 川を横断して長さ六〇〇メートルのダムが築かれている。
- 音波によるスキャンで四角い建物がたくさん見つかっているが、その土台は石であると予想されている。
- 遺物を炭素年代法で調べたところ、紀元前七五〇〇年という数字が出てきた。
- インドのジョン科学技術相は「ハラッパ遺跡と似ている。紀元前三五〇〇年頃出現したイラクのシュメール文化をはるかにさかのぼる世界最古の都市の可能性がある」とのべている。
- 世界最古の文明は古代シュメールでも古代エジプトでもなかった。
- 紀元前三五〇〇年から紀元前三〇〇〇年頃に、世界の四大文明が興ったという学説は時代遅れとなった。
- 世界の四大文明が興るはるか四〇〇〇年前に、すでに都市を構築する高度な文明が存在した。
- ということは、歴史上の四大文明は、四〇〇〇年古い文明の遺産を受け継いでいる可能性が高い。
- 今回見つかった古代都市は古代インダス文明につながる遺跡のようだ。
- 海底の砂の下を探すと遺跡が見つかる。
- 最後の氷河期極相期は一万六五〇〇年前、それから氷床が溶けはじめて、七〇〇〇年前頃に安定した。その間に海面が一二〇メートル上昇している。 今回見つかった古代都市も、このような氷河期の後の氷床の溶解によって、水没したと見られる。九五〇〇年前というと海面が急上昇していた時代だ。というこ とは、今後も同じような古代都市が世界中の海底で発見される可能性が強い。
- 失われた文明が存在しないという常識は、間違っていた。
- 世界中には謎がたくさんある。それらの謎が存在するには理由があることが判明した。私たちが知らないこと、あるいは人類として忘れ去ってしまったことが、あることが判明した。
- プラトンが書いているアトランティスの話にも根拠があるようだ。
- 古代エジプトの神官が、古代エジプトの歴史は三万年の昔まで戻るといっているが、このことにも信ぴょう性が出てきた。
- インダス文明については、今知られているよりも四〇〇〇年も前に先行文明があったことがわかった。したがって、現在知られている他の三大文明にも、それぞれ先行する文明があった可能性がある
- 最終氷河期が終わった頃に、まだ陸地であったところで、今は水没している地域の海底を調査すると、世界中で失われた文明の遺跡が見つかる可能性 が出てきた。調査する候補地としてはインドネシア近辺のスンダ大陸棚、台湾と中国の間、朝鮮半島と遼東半島の間、アラビア湾、紅海、インド西部のアラビア 海、フロリダ海域のビミニなどがあげられる。
- 歴史の教科書はすべて書き直されなければならない
世紀の大発見!
2002年1月16日、インドのジョン科学技術相は「グジャラート州スラト沖で9500年前のものとみられる古代都市の遺跡が見つかった」と公式に発表し、その後、世界中で話題になっている。
ほぼ1万年前に、モヘンジョダロ遺跡と同じものがすでに存在していたのだ。これは一体、何を意味するのだろう。
19世紀半ばには「レムリア大陸」説が発表されて、当時の学界を大いに揺るがせた。太平洋に古い大陸があり、「人類誕生、文明揺籃の地」だったというの だ。確かにインドネシア、マレーシアにはスンダ大陸棚があり、氷河時代には古大陸を形成していた。この説では、太平洋の真ん中にも大陸があったとしてい る。つまり「ムー大陸」のようなものだ。
インドのカンベイ湾で見つかった古代都市は、「レムリア大陸」からは、離れすぎている。では、「アトランティス大陸」ではないか? と言いたくなるが、アトランティスは大西洋にあったとされている。
友人の作家グラハム・ハンコックは過去5年間、海底都市を探し求めて、世界中でダイビングを行った。その結果、インド東海岸に大規模な海底都市遺跡を発 見している。チェンナイ(マドラス)の南60キロにあるマハーバリプラムの沖合に、都市遺跡があるのだ。この遺跡も6000年以上前のものであることがほ ぼ確実とされているが、発見されたのが2002年4月であり、調査はまだ始まったばかりだ。この5年間の調査結果は「神々の世界・アンダーワールド」(小 学館刊)というタイトルで、出版された。
21世紀は、海洋考古学、水中考古学が花咲く時代のようだ。そして、カンベイ湾に沈む大規模な古代都市が9500年前に存在したことが確実になると、世 界史は大きく書き換えられることになる。グラハム・ハンコックは「人類の歴史には忘れ去られた1幕がある。私たちは健忘症にかかっているのだ。先史時代に は高度な科学を持った文明が存在していたが、忘れ去られているのだ」と、いつも主張してきた。ハンコックの主張が正しいことが証明されたのだろうか?
正しいことが証明されたかどうかを知るためには、NIOTの調査を厳しく吟味する必要がある。そこで2002年7月中旬にNIOTを訪問し、私自身の目で遺物を見て、いろいろな疑問を責任者にぶつけて見ることにした。 <インド国立海洋技術研究所(NIOT)の地質学コンサルタントのS・バドリナラヤン氏のインタビュー>
大地:都市遺跡を偶然見つけたとのことですが、何の調査をしていたのですか?
バドリナラヤン:海の汚染調査です。毎年やっていますが、今回は最新鋭のサイドスキャン・ソナーを使って、海底地形と、海底下の地形を調べ たのです。そうしたら、幾何学模様の都市遺跡が浮かんできたので驚愕しました。過去30年以上海底と地上の地層を見ていますが、これが人工物であることは 100%まちがいありません。
大地:木材だけの年代測定で、9500年前の遺跡と断定できるのでしょうか?
バドリナラヤン:川にしか住めない貝も発掘されており年代を測定中です。人間の歯も年代測定中です。さらには遺跡の近くからサンゴが見つ かっています。ご存知のようにサンゴは澄んだ海水がある、浅い海域でしか育ちません。つまりこの地域は、現在のような泥海ではなく。サンゴが住める海だっ たときがあるのです。海底都市もその時代のものでしょう。このサンゴも年代測定中です。
大地:木材はどのくらいの深さで見つかったのですか?
バドリナラヤン:海底の下50センチから1メートルの間です。海底下30センチまでは海の地層になっています。それより下は古代の川の地層 です。そこから見つかっていますから、都市遺跡と同じ時代のものと言えます。木材をよく見ていただければ、わかりますが、明らかに人工的な鋭い切り口があ ります(写真参照)。
大地:海底に転がっていたわけではないのですね?
バドリナラヤン:発掘したときは、白くて新鮮でした。それが1日で黒くなってしまいました。1メートル近い深さに横たわっていたことは確実です。
大地:宝石類が見つかっており、穴が開いており、装身具だということですが、自然に開いた穴、あるいは動物が開けた穴である可能性はありませんか?
バドリナラヤン:インドの著名な研究所に依頼してドイツ製のマイクロ顕微鏡で詳しく調べてもらいました。その結果、化学反応はなく打撃跡とわかる割れ目が入っています。これは明らかに人間が鋭い道具を当て、打撃して開けた穴だそうです。
大地:遺物を見せていただきましたが、地上で発見される斧や石の道具に比べ、摩耗が激しいようですね?
バドリナラヤン:海の底に置かれていた時期に、摩耗されたのでしょう。海底の下で見つかる遺物は、摩耗が激しくても不思議はないと思います。でも、実物を見た考古学者たち全員が、これらのほとんどが人工遺物であることを認めています。
大地:さらに深く掘れば、地上で見つかるのと同じような遺物が見つかるはずですね。
バドリナラヤン:そう思います。もう一つ、付け加えておきたいのは、都市遺跡のあるところから15メートルほど離れた場所をいくら探しても、遺物が一つも見つからないことです。つまり海底都市遺跡がスキャナーに映っている場所だけから、このような遺物が見つかるのです。
大地:ずいぶん荒っぽい発掘の仕方ですね。
バドリナラヤン:しかたありません。カンベイ湾は世界で2番目に潮の変化の激しいところです。朝の6時に0メートルだったら、12時には 11メートルの高さになり、午後5時にはまた0メートルに戻ります。満ち潮と引き潮の差が激しく、時速12~13キロの海流が、いつも流れています。その ため、水中の砂や泥が巻き上げられ、海水はいつも澱んでおり、透明になるときはありません。これではダイビング調査はほぼ不可能ですし、地上の考古学的調 査の手法は採用できません。
大地:ソナーからは何が読み取れますか?
バドリナラヤン:面 白いことに都市の東側には小さな家が並んでいます。家の土台は3メートルx5メートル程度です。それが都市の中央部になると11メートルx7メートルの土 台になり、西側は金持ち達の住居跡のようで、16メートルx15メートルの土台になっています。そこには大浴場の跡もあります。町の最西端の高台には大き な構造物があります。長さ200メートルx幅18メートルと、長さ45メートルx18メートルの建物です。これらの建物は壁で囲まれています。壁の高さは 3メートルで、中には階段や回廊があるのがわかります。でも、神殿かどうかは、ハッキリ言えません。
大地:モヘンジョダロとそっくりなわけですね?
バドリナラヤン:そうです。下水道や街路もありますし、長さ600メートルのダムも存在します。
大地:今後は、どんな計画ですか?
バドリナラヤン:インド政府の後押しで、インド中のさまざまな国立研究所が総力挙げて、この大発見の検証をします。2年計画ですが、 2002年12月から03年2月にかけては、更なる発見をしたいと計画しています。今回は海底の地図化をしますし、さらに深くまで発掘します。4~5人乗 りの潜水艦を使って、海底も見てみます。海軍の特殊ダイバーたちも協力してくれるので、ダイビング調査も行います。
大地:インドのナショナル・プロジェクトですね。
バドリナラヤン:その通りですが、グローバルな協力を求める考えです。ハーバード大学の南アジア考古学で名高いリチャード・M・メドウ教授も協力を申し出てくれています。世界中の研究機関に協力を仰ぐ考えです。
大地:2年後には世界史が変わることになりますね? 文明の発祥が5000年前ではなく9500年以上前になるわけですから。
バドリナラヤン:その通りです。世界史が変わり、文明の歴史が変わります。だからこそ高度に科学的アプローチを取る必要があると思います。2003年3月には国際シンポジュームも開催できるかもしれません。
大地:楽しみにしています。
ほぼ1万年前に、モヘンジョダロ遺跡と同じものがすでに存在していたのだ。これは一体、何を意味するのだろう。
19世紀半ばには「レムリア大陸」説が発表されて、当時の学界を大いに揺るがせた。太平洋に古い大陸があり、「人類誕生、文明揺籃の地」だったというの だ。確かにインドネシア、マレーシアにはスンダ大陸棚があり、氷河時代には古大陸を形成していた。この説では、太平洋の真ん中にも大陸があったとしてい る。つまり「ムー大陸」のようなものだ。
インドのカンベイ湾で見つかった古代都市は、「レムリア大陸」からは、離れすぎている。では、「アトランティス大陸」ではないか? と言いたくなるが、アトランティスは大西洋にあったとされている。
友人の作家グラハム・ハンコックは過去5年間、海底都市を探し求めて、世界中でダイビングを行った。その結果、インド東海岸に大規模な海底都市遺跡を発 見している。チェンナイ(マドラス)の南60キロにあるマハーバリプラムの沖合に、都市遺跡があるのだ。この遺跡も6000年以上前のものであることがほ ぼ確実とされているが、発見されたのが2002年4月であり、調査はまだ始まったばかりだ。この5年間の調査結果は「神々の世界・アンダーワールド」(小 学館刊)というタイトルで、出版された。
21世紀は、海洋考古学、水中考古学が花咲く時代のようだ。そして、カンベイ湾に沈む大規模な古代都市が9500年前に存在したことが確実になると、世 界史は大きく書き換えられることになる。グラハム・ハンコックは「人類の歴史には忘れ去られた1幕がある。私たちは健忘症にかかっているのだ。先史時代に は高度な科学を持った文明が存在していたが、忘れ去られているのだ」と、いつも主張してきた。ハンコックの主張が正しいことが証明されたのだろうか?
正しいことが証明されたかどうかを知るためには、NIOTの調査を厳しく吟味する必要がある。そこで2002年7月中旬にNIOTを訪問し、私自身の目で遺物を見て、いろいろな疑問を責任者にぶつけて見ることにした。 <インド国立海洋技術研究所(NIOT)の地質学コンサルタントのS・バドリナラヤン氏のインタビュー>
大地:都市遺跡を偶然見つけたとのことですが、何の調査をしていたのですか?
バドリナラヤン:海の汚染調査です。毎年やっていますが、今回は最新鋭のサイドスキャン・ソナーを使って、海底地形と、海底下の地形を調べ たのです。そうしたら、幾何学模様の都市遺跡が浮かんできたので驚愕しました。過去30年以上海底と地上の地層を見ていますが、これが人工物であることは 100%まちがいありません。
大地:木材だけの年代測定で、9500年前の遺跡と断定できるのでしょうか?
バドリナラヤン:川にしか住めない貝も発掘されており年代を測定中です。人間の歯も年代測定中です。さらには遺跡の近くからサンゴが見つ かっています。ご存知のようにサンゴは澄んだ海水がある、浅い海域でしか育ちません。つまりこの地域は、現在のような泥海ではなく。サンゴが住める海だっ たときがあるのです。海底都市もその時代のものでしょう。このサンゴも年代測定中です。
大地:木材はどのくらいの深さで見つかったのですか?
バドリナラヤン:海底の下50センチから1メートルの間です。海底下30センチまでは海の地層になっています。それより下は古代の川の地層 です。そこから見つかっていますから、都市遺跡と同じ時代のものと言えます。木材をよく見ていただければ、わかりますが、明らかに人工的な鋭い切り口があ ります(写真参照)。
大地:海底に転がっていたわけではないのですね?
バドリナラヤン:発掘したときは、白くて新鮮でした。それが1日で黒くなってしまいました。1メートル近い深さに横たわっていたことは確実です。
大地:宝石類が見つかっており、穴が開いており、装身具だということですが、自然に開いた穴、あるいは動物が開けた穴である可能性はありませんか?
バドリナラヤン:インドの著名な研究所に依頼してドイツ製のマイクロ顕微鏡で詳しく調べてもらいました。その結果、化学反応はなく打撃跡とわかる割れ目が入っています。これは明らかに人間が鋭い道具を当て、打撃して開けた穴だそうです。
大地:遺物を見せていただきましたが、地上で発見される斧や石の道具に比べ、摩耗が激しいようですね?
バドリナラヤン:海の底に置かれていた時期に、摩耗されたのでしょう。海底の下で見つかる遺物は、摩耗が激しくても不思議はないと思います。でも、実物を見た考古学者たち全員が、これらのほとんどが人工遺物であることを認めています。
大地:さらに深く掘れば、地上で見つかるのと同じような遺物が見つかるはずですね。
バドリナラヤン:そう思います。もう一つ、付け加えておきたいのは、都市遺跡のあるところから15メートルほど離れた場所をいくら探しても、遺物が一つも見つからないことです。つまり海底都市遺跡がスキャナーに映っている場所だけから、このような遺物が見つかるのです。
大地:ずいぶん荒っぽい発掘の仕方ですね。
バドリナラヤン:しかたありません。カンベイ湾は世界で2番目に潮の変化の激しいところです。朝の6時に0メートルだったら、12時には 11メートルの高さになり、午後5時にはまた0メートルに戻ります。満ち潮と引き潮の差が激しく、時速12~13キロの海流が、いつも流れています。その ため、水中の砂や泥が巻き上げられ、海水はいつも澱んでおり、透明になるときはありません。これではダイビング調査はほぼ不可能ですし、地上の考古学的調 査の手法は採用できません。
大地:ソナーからは何が読み取れますか?
バドリナラヤン:面 白いことに都市の東側には小さな家が並んでいます。家の土台は3メートルx5メートル程度です。それが都市の中央部になると11メートルx7メートルの土 台になり、西側は金持ち達の住居跡のようで、16メートルx15メートルの土台になっています。そこには大浴場の跡もあります。町の最西端の高台には大き な構造物があります。長さ200メートルx幅18メートルと、長さ45メートルx18メートルの建物です。これらの建物は壁で囲まれています。壁の高さは 3メートルで、中には階段や回廊があるのがわかります。でも、神殿かどうかは、ハッキリ言えません。
大地:モヘンジョダロとそっくりなわけですね?
バドリナラヤン:そうです。下水道や街路もありますし、長さ600メートルのダムも存在します。
大地:今後は、どんな計画ですか?
バドリナラヤン:インド政府の後押しで、インド中のさまざまな国立研究所が総力挙げて、この大発見の検証をします。2年計画ですが、 2002年12月から03年2月にかけては、更なる発見をしたいと計画しています。今回は海底の地図化をしますし、さらに深くまで発掘します。4~5人乗 りの潜水艦を使って、海底も見てみます。海軍の特殊ダイバーたちも協力してくれるので、ダイビング調査も行います。
大地:インドのナショナル・プロジェクトですね。
バドリナラヤン:その通りですが、グローバルな協力を求める考えです。ハーバード大学の南アジア考古学で名高いリチャード・M・メドウ教授も協力を申し出てくれています。世界中の研究機関に協力を仰ぐ考えです。
大地:2年後には世界史が変わることになりますね? 文明の発祥が5000年前ではなく9500年以上前になるわけですから。
バドリナラヤン:その通りです。世界史が変わり、文明の歴史が変わります。だからこそ高度に科学的アプローチを取る必要があると思います。2003年3月には国際シンポジュームも開催できるかもしれません。
大地:楽しみにしています。
世界最古の都市遺跡発見
(ウイークリー・ヨミウリ2002年8月号掲載に加筆)
「インドのジョン科学技術相は16日、同国西部グジャラート州カンベイ湾スラト沖で9500年前のものとみられる古代都市の遺跡が見つかったと発表し た・・・発見されたのは、木片やつぼのかけら、骨の化石などで・・・放射性炭素を使った測定法で木片を調べたところ、紀元前7500年頃前のものと推定さ れた。また海底には、建造物らしいものがあることが水中音波探査装置で分かったという」(読売新聞2002年1月7日朝刊)
気楽に読まれた方もいるかもしれないが、この記事の意味することは、衝撃的だ。
第一に、これまで学校で教わってきた、「人類の文明は5500年前頃シュメールで始まった」という考えを捨てなければならなくなる。第2に、古代エジプ ト、古代中国、古代マヤ、古代シュメールなどの5大文明が、高度な失われた文明から遺産を引き継いでいた可能性が出てくる。
100年も前から、多くの科学者が、声を大にして「失われた文明が存在する」と主張してきたが、主流派の科学者には受け入れられてこなかった。なぜな ら、陸地をいくら探しても、失われた文明の痕跡が見つからなかったからだ。だが、海底を探せば、カンベイ湾の都市遺跡のような失われた文明の痕跡が見つか ることが、証明されたのか?
さて、1月17日の後、さらに詳しい報告があるだろうと6カ月も待ったが、何の報道もない。そこで海底都市を発見したインド国立海洋技術研究所(NIOT)を直接訪ねてみることにした。この大発見を額面通り受け取っても大丈夫かどうかを、確認したかったのだ。
NIOTに電話をいれたところ、大歓迎だとのこと。早速、7月後半にチェンナイ(旧称マドラス)市に飛んだ。インド工科大学の広い敷地の一角を占めるNIOTで働く地質学者・生物学者たちは、活気にあふれていた。今回の発見で意気軒高なのだ。
「私は海底と地上の地形地質調査に30年の経験があります。人工物と自然の造形を間違えることはありません。カンベイ湾スラト沖の海底40メートルの砂 の下には、古代都市が眠っています。モヘンジョダロやハラッパーなどとそっくりの町並みです」と、NIOTの地質学コンサルタントのS・バドリナラヤン氏 は、確信をもって語る。
地図を見て欲しいが、カンベイ湾スラト沖というと、インド北西部グジャラート州カーティアワール半島の南側だ。カーティアワール半島一帯には数多くの、 インダス文明の遺跡が発掘されており、カンベイ湾の海底に都市跡が発見されても、場所的に不思議はない。だが、問題は、海底40メートルの深さに水没して いることだ。
ご存知のように今から1万7000年前に氷河期は最盛期を迎え、地球上の氷冠が拡大し、海の水が氷河に凍結して、海面の高さが、現在よりも一二〇メート ルから一四〇メートルも低かった。その後、氷が溶けはじめ、今から7000年前には、ほぼ、現在の海面の高さになったことが分かっている。
したがって、氷河が溶けたことによる海面の上昇だけから考えると、この都市が水没したのは、少なくとも7000年前になる。水没のもう一つの可能性は、 地震などの地殻変動によってこの地帯が沈降したことだ。カーティアワール半島一帯は、地震が多いことで知られている。だが、サブボトム・プロファイラーと いう、海底の下の地層を調べることができる装置で調査したところ、建物の土台の跡がそのまま残っており、地震で崩壊した様子は見られない。したがって、地 震による水没ではないだろう。
サブボトム・プロファイラー装置については、知らない人も多いと思う。この装置は低周波の音波を発して、海底下の地層を調べるものだ。機械によっては海 底下二〇メートルまで調査できる。インド国立海洋技術研究所が使用している装置はアメリカ製の最新鋭デジタル機だ。海底に細かく並行線を描くように音波を 当て、後から、その断面図をつなぎあわせると、海底下の地層の立体図が浮かび上がるのだ。
一方、サイドスキャナーという装置は同じ技術を使うが、海底の姿の鳥瞰図を作るものだ。(つづく)
「インドのジョン科学技術相は16日、同国西部グジャラート州カンベイ湾スラト沖で9500年前のものとみられる古代都市の遺跡が見つかったと発表し た・・・発見されたのは、木片やつぼのかけら、骨の化石などで・・・放射性炭素を使った測定法で木片を調べたところ、紀元前7500年頃前のものと推定さ れた。また海底には、建造物らしいものがあることが水中音波探査装置で分かったという」(読売新聞2002年1月7日朝刊)
気楽に読まれた方もいるかもしれないが、この記事の意味することは、衝撃的だ。
第一に、これまで学校で教わってきた、「人類の文明は5500年前頃シュメールで始まった」という考えを捨てなければならなくなる。第2に、古代エジプ ト、古代中国、古代マヤ、古代シュメールなどの5大文明が、高度な失われた文明から遺産を引き継いでいた可能性が出てくる。
100年も前から、多くの科学者が、声を大にして「失われた文明が存在する」と主張してきたが、主流派の科学者には受け入れられてこなかった。なぜな ら、陸地をいくら探しても、失われた文明の痕跡が見つからなかったからだ。だが、海底を探せば、カンベイ湾の都市遺跡のような失われた文明の痕跡が見つか ることが、証明されたのか?
さて、1月17日の後、さらに詳しい報告があるだろうと6カ月も待ったが、何の報道もない。そこで海底都市を発見したインド国立海洋技術研究所(NIOT)を直接訪ねてみることにした。この大発見を額面通り受け取っても大丈夫かどうかを、確認したかったのだ。
NIOTに電話をいれたところ、大歓迎だとのこと。早速、7月後半にチェンナイ(旧称マドラス)市に飛んだ。インド工科大学の広い敷地の一角を占めるNIOTで働く地質学者・生物学者たちは、活気にあふれていた。今回の発見で意気軒高なのだ。
「私は海底と地上の地形地質調査に30年の経験があります。人工物と自然の造形を間違えることはありません。カンベイ湾スラト沖の海底40メートルの砂 の下には、古代都市が眠っています。モヘンジョダロやハラッパーなどとそっくりの町並みです」と、NIOTの地質学コンサルタントのS・バドリナラヤン氏 は、確信をもって語る。
地図を見て欲しいが、カンベイ湾スラト沖というと、インド北西部グジャラート州カーティアワール半島の南側だ。カーティアワール半島一帯には数多くの、 インダス文明の遺跡が発掘されており、カンベイ湾の海底に都市跡が発見されても、場所的に不思議はない。だが、問題は、海底40メートルの深さに水没して いることだ。
ご存知のように今から1万7000年前に氷河期は最盛期を迎え、地球上の氷冠が拡大し、海の水が氷河に凍結して、海面の高さが、現在よりも一二〇メート ルから一四〇メートルも低かった。その後、氷が溶けはじめ、今から7000年前には、ほぼ、現在の海面の高さになったことが分かっている。
したがって、氷河が溶けたことによる海面の上昇だけから考えると、この都市が水没したのは、少なくとも7000年前になる。水没のもう一つの可能性は、 地震などの地殻変動によってこの地帯が沈降したことだ。カーティアワール半島一帯は、地震が多いことで知られている。だが、サブボトム・プロファイラーと いう、海底の下の地層を調べることができる装置で調査したところ、建物の土台の跡がそのまま残っており、地震で崩壊した様子は見られない。したがって、地 震による水没ではないだろう。
サブボトム・プロファイラー装置については、知らない人も多いと思う。この装置は低周波の音波を発して、海底下の地層を調べるものだ。機械によっては海 底下二〇メートルまで調査できる。インド国立海洋技術研究所が使用している装置はアメリカ製の最新鋭デジタル機だ。海底に細かく並行線を描くように音波を 当て、後から、その断面図をつなぎあわせると、海底下の地層の立体図が浮かび上がるのだ。
一方、サイドスキャナーという装置は同じ技術を使うが、海底の姿の鳥瞰図を作るものだ。(つづく)
カンベイ湾:一万年前の海底都市
(ウイークリー・ヨミウリ掲載2002年8月に加筆) ここに掲載した写真はサイドスキャン装置で撮影された海底の姿。これをよく見ていただけば分かるように、建物の土台が並んでいる。別の写真には神殿の様な 階段を持つ構造物が有り、階段つきの大浴場が見える。長さ600メートルのダムも存在する。このような住居跡が長さ9キロにわたって、古代の川の両岸に存 在している。
S・バドリナラヤン氏によると、インド国立海洋技術研究所(NIOT)が、カンベイ湾で古代都市が見つかったと発表したのは2000年5月だったとい う。だが当時、世界中の考古学者たちの反応は、否定的なものだった。「そんな深い場所に、大都市遺跡が在るわけがない」「スキャナー装置が幻影を映し出し たのだろう」「NIOTには考古学者がいないから、何かを見間違えたのだ」と、一笑にふされた。
この反応に驚いたNIOTの地質学者や生物学者は、「それでは確かな証拠をみせましょう」とカンベイ湾スラト沖に戻り、海底の発掘をはじめた。とは言っ ても、地上における考古学的発掘とは、だいぶ様子が違う。海底に「グラッブ」という大きなシャベルを落とし、一メートルの深さまでの海底の地層をすくい上 げた。また、「ドラッグ」という装置を、海底下40センチぐらいまで打ち込み、そのまま100メートルも海底を引きずり、海底下の地層に存在する遺物を引 き揚げたのだ。
このような方法で、遺跡の場所を採掘したところ、1日で2000個の遺物が発見された。それらは宝石などの装身具、貝、小さな像、象牙、人間の骨や歯、木片、壺のかけらだ。
NIOTはすぐに炭素年代測定法で測定できる有機物を、著名な年代測定研究所に送って、測定を依頼した。現在までに3つの研究機関から「木材」の年代調 査結果の報告が来ている。ドイツのハノーバーに在る世界的権威のある研究所の報告では、この木材は紀元前7545年から前7490年に切られたという。イ ンドの2つの著名な年代測定研究所は、それぞれ、紀元前7500年、紀元前5500年という数字を出している。
これで、カンベイ湾に沈む古代都市は、今から7500年前から9500年前に存在していた可能性が高まった・・・やはりこれは世紀の大発見だ!
だが、まだ疑問も残る。そこでS・バドリナラヤン氏にさらにいくつか、質問をしてみた。
大地:木材だけの年代測定で、9500年前の遺跡と断定できますか?
バドリナラヤン:人間の歯や、川にしか住めない貝も年代測定中です。遺跡の近くからサンゴが見つかっています。サンゴは澄んだ海の浅い海域でしか育ちませ ん。つまりこの地域は、現在のような泥海ではなく。サンゴが住める海だったときがあるのです。海底都市もその時代のものでしょう。このサンゴも年代測定中 です。 大地:木材はどのくらいの深さで見つかったのですか?
バドリナラヤン:海底の下50センチから1メートルの間です。海底下30センチまでは海の地層になっています。それより下は古代の川の地層です。そこから 見つかっていますから、都市遺跡と同じ時代のものと言えます。木材をよく見ていただければ、わかりますが、明らかに人工的な鋭い切り口があります。
大地:海底に転がっていたわけではないのですね?
バドリナラヤン:発掘したときは、白くて新鮮でした。それが1日で黒くなってしまいました。1メートル近い深さに横たわっていたことは確実です。
大地:遺物が発見されたのは、どこですか?
バドリナラヤン:スキャナーに映っている都市遺跡のあるところからです。そこから15メートルほど離れると、遺物が一つも見つかりません。
大地:今後の計画は?
バドリナラヤン:インド政府の後押しで、インド中のさまざまな国立研究所が総力挙げて、この大発見の検証をします。2年計画ですが、2002年12月から 03年2月にかけては海底の地図化を行い、さらに深くまで発掘します。4~5人乗りの潜水艦を使って、海底も見てみます。海軍の特殊ダイバーたちも協力し てくれるので、ダイビング調査も行います。
NIOTに最近、参画した考古学者のシャセカラン氏は、引き揚げられた遺物のほとんどが人工物だと断言する。どうやら人類の文明の発祥は、少なくとも1 万年前までさかのぼるようだ。あるいは古代エジプトの神官が述べるように。3万年の文明史があるのかもしれない。私たちは、記憶喪失をしているに違いな い。人類の文明の発祥の真相は海底の下に横たわっているようだ。
S・バドリナラヤン氏によると、インド国立海洋技術研究所(NIOT)が、カンベイ湾で古代都市が見つかったと発表したのは2000年5月だったとい う。だが当時、世界中の考古学者たちの反応は、否定的なものだった。「そんな深い場所に、大都市遺跡が在るわけがない」「スキャナー装置が幻影を映し出し たのだろう」「NIOTには考古学者がいないから、何かを見間違えたのだ」と、一笑にふされた。
この反応に驚いたNIOTの地質学者や生物学者は、「それでは確かな証拠をみせましょう」とカンベイ湾スラト沖に戻り、海底の発掘をはじめた。とは言っ ても、地上における考古学的発掘とは、だいぶ様子が違う。海底に「グラッブ」という大きなシャベルを落とし、一メートルの深さまでの海底の地層をすくい上 げた。また、「ドラッグ」という装置を、海底下40センチぐらいまで打ち込み、そのまま100メートルも海底を引きずり、海底下の地層に存在する遺物を引 き揚げたのだ。
このような方法で、遺跡の場所を採掘したところ、1日で2000個の遺物が発見された。それらは宝石などの装身具、貝、小さな像、象牙、人間の骨や歯、木片、壺のかけらだ。
NIOTはすぐに炭素年代測定法で測定できる有機物を、著名な年代測定研究所に送って、測定を依頼した。現在までに3つの研究機関から「木材」の年代調 査結果の報告が来ている。ドイツのハノーバーに在る世界的権威のある研究所の報告では、この木材は紀元前7545年から前7490年に切られたという。イ ンドの2つの著名な年代測定研究所は、それぞれ、紀元前7500年、紀元前5500年という数字を出している。
これで、カンベイ湾に沈む古代都市は、今から7500年前から9500年前に存在していた可能性が高まった・・・やはりこれは世紀の大発見だ!
だが、まだ疑問も残る。そこでS・バドリナラヤン氏にさらにいくつか、質問をしてみた。
大地:木材だけの年代測定で、9500年前の遺跡と断定できますか?
バドリナラヤン:人間の歯や、川にしか住めない貝も年代測定中です。遺跡の近くからサンゴが見つかっています。サンゴは澄んだ海の浅い海域でしか育ちませ ん。つまりこの地域は、現在のような泥海ではなく。サンゴが住める海だったときがあるのです。海底都市もその時代のものでしょう。このサンゴも年代測定中 です。 大地:木材はどのくらいの深さで見つかったのですか?
バドリナラヤン:海底の下50センチから1メートルの間です。海底下30センチまでは海の地層になっています。それより下は古代の川の地層です。そこから 見つかっていますから、都市遺跡と同じ時代のものと言えます。木材をよく見ていただければ、わかりますが、明らかに人工的な鋭い切り口があります。
大地:海底に転がっていたわけではないのですね?
バドリナラヤン:発掘したときは、白くて新鮮でした。それが1日で黒くなってしまいました。1メートル近い深さに横たわっていたことは確実です。
大地:遺物が発見されたのは、どこですか?
バドリナラヤン:スキャナーに映っている都市遺跡のあるところからです。そこから15メートルほど離れると、遺物が一つも見つかりません。
大地:今後の計画は?
バドリナラヤン:インド政府の後押しで、インド中のさまざまな国立研究所が総力挙げて、この大発見の検証をします。2年計画ですが、2002年12月から 03年2月にかけては海底の地図化を行い、さらに深くまで発掘します。4~5人乗りの潜水艦を使って、海底も見てみます。海軍の特殊ダイバーたちも協力し てくれるので、ダイビング調査も行います。
NIOTに最近、参画した考古学者のシャセカラン氏は、引き揚げられた遺物のほとんどが人工物だと断言する。どうやら人類の文明の発祥は、少なくとも1 万年前までさかのぼるようだ。あるいは古代エジプトの神官が述べるように。3万年の文明史があるのかもしれない。私たちは、記憶喪失をしているに違いな い。人類の文明の発祥の真相は海底の下に横たわっているようだ。