第9章 手の毛
手の毛に関しても注意を払う必要があります。 手相を見るさいに手の毛の情報は重要ではありませんが、大事な小さな要素です。時には手の毛の情報から顧客の複雑な性格の心理を解く鍵となることがあります。 頭に毛があるのは自然です。頭は毛で覆われているのが普通です。しかし、人間は毛だらけの身体を持つものではありません。毛だらけならばその方はあるタイプに属し、特別な性質を持っています。 人間の体毛が濃いほど、その方の肉体的な力が強いことを示します。また体毛が濃いほど、その方に粗野な面があることを示しています。 手はよく使われるので、手の毛は抜けてしまうことが多いのです。したがって、手に毛が残っていることはその方が活力に溢れていることを示します。このように活力のある方は、衰弱に良く耐えますし、深刻な病気にかかっても、重大な結果にいたらずよく持ちこたえます。 手相を見る時に、毛を観ることはあまりいでしょう。とくに女性の手に関しては観ないでしょう。しかし女性の手に毛が見られるとき、それは男性的な傾向を示していますので、彼女を判断するさいの重要な要素となります。 男性の手ではもっと毛に遭遇します。男性は女性よりも壮健だからです。男性の手に毛がないからといって、その方が女性的だと思うのは間違いです。その方はより細い糸で作られていて、肉体的に強くないかもしれませんが、性格は強烈かもしれません。 すべての毛は、粗野か上品かのどちらかです。これをみて、その方の性格が分かります。粗野な毛は、最高に上品なきめを持つ人々には生えません。粗野な毛は強靭な方に生えますが、必ずしも上品ではないかもしれません。 高価な宝石を身に飾り、高級な服を着た大金持ちの女性がいても、その方の手に粗野な毛が生えていたら、基本的に庶民的で、上品な方ではありません。 すべての観察であなたが知りたいのは、顧客がどんな本質で成り立っているかです。したがって粗野か上品か、肉体的に強いかどうかなどを、手の毛から知ることには、それなりの価値があります。 肉体的観点から観ると、毛は皮膚の毛穴から成長します。毛穴には嚢(のう)あるいは根があり、栄養分がそこから毛に供給されます。皮膚に深く根付いた嚢(のう)は、人間の活力源である栄養素を吸収し、その幾分かを毛に補給します。 すべての嚢(のう)から毛が生えているわけではありません。いくつかの嚢からはまったく毛が生えません。もしも顧客の活力がそれほど強力でなければ、毛は生えてきません。毛が生えてから活力が失われると、毛は乾燥して成長を停止します。 高熱を出すとその熱で嚢(のう)が破損されて毛は抜けてしまいます。神経的に衰弱しても、神経液(the nervous fluid)が毛嚢の活力を焼いてしまい、毛はもろくなり、生命を感じさせなくなります。この状態は、神経衰弱によるもろい爪と同様の現象です。 よく知られていることですが、血液の中の鉄分が、偉大な強さの源泉となっています。活力を失っている患者に、医師がさまざまな鉄分が入った処方を施すのはそのためです。 毛は自然の状態では色を持ちません。毛にさまざまなレベルの色が付くのは、さまざまな分量の鉄分の色素が体内から吸収され、毛嚢から毛に供給されるためです。毛には白、灰色、黒、ブロンド、赤、赤褐色などの種類があるのは、以上の理由によります。 ブロンドの毛 興味深いのは、緯度の高い北極圏に住む人々の典型的な毛の色がブロンドであることです(スカンジナビア人やサクソン人の色)。一方、南方地方に住むラテン民族の毛が黒いことです。 このような分類で、あなたが会う人々を分けることは不可能になってきています。なぜなら、現代では異なった人種間の結婚が進み、毛の色もさまざまになっているからです。ブロンドと黒毛の混合もどうしようもないほど進んでいます。 ただ覚えていてよいのは、耐寒性のスカンジナビア人、スエーデン人、オランダ人などは、ブロンド毛の系統に属し、フランス、イタリア、スペイン、東洋諸国の人々は黒毛の系統に属することです。 スカンジナビア人たちが、寒さや疲労に耐え忍んでいること、さらには鉄分が色を作ることを考えると、なぜ彼らの色がブロンドであるかが理解できます。彼らの肉体は極端な寒さに直面して、身体の活力のすべてを使います。その時に鉄分を使い果たし、毛に回す分が不足しているのではないでしょうか? スカンジナビア人たちは性格が冷淡で、愛においても堅苦しく、情熱的な熱情や炎に欠けるところがあると言われています。黒い毛を持つラテン系に比べて、彼らは情熱的に燃え上がることもなく、望みがかなわなくても冷静なところがあります。 男女が一緒に生活しても、仕事の面では助け合いますが、二人のあいだに燃えるような愛とか優しさとかが存在しないことが多いようです。このような人々は粘液質(冷淡)だと呼ばれます。 彼らは寒冷地で生命を維持するだけでもたいへんな精力を消費しています。そこで熱を生む鉄分が使い果たされ、健康や情熱に炎を注ぐ鉄分があまり残っていないのだと思われます。情熱的であるには有り余るほどの健康と活力が必要です。 手の毛がブロンド色の方は、気性が安定しており、感情的にならず、冷静で粘液質の方です。あまり好色過ぎるということもなく、堅実で、肉感的でなく、実際的・実務的で、エネルギーに溢れ、常識があり、正直な方であることが多く、 感情を交えない傾向があるでしょう。 この傾向はスエーデン人やノルエー人などのブロンド色に見られます。彼らの色は麦わらのような黄色です。ブロンド色を持つからといって、すべてが上記のような性質を持つとは限りません。中には赤みがかったブロンドもありますし、影となる部分が黒ならば、それを考慮にいれて、あなたの意見を構築すべきです。 スエーデン人のブロンド色を、基準とすると良いでしょう。それとくらべて顧客の毛の色がどのように他の色と混ざっているかを見るのです。ここで述べている毛の色とは、手に生えている毛の色であることを忘れないでください。 黒い毛 黒い毛はラテン系、東洋系の人々に属しています。彼らは溢れる太陽光と快いそよ風の吹く地域に住んでいます。彼らはすでに述べた極寒地方に住む苦労している人々とは違います。黒い毛の人々には活力溢れるエネルギーと強靭さがあり、身体の鉄分も豊富です。極寒地方に住む人々とは異なり、鉄分を、命を保つだけのために使う必要はありませんから毛嚢にも吸収され、それが毛管を通って毛を黒くするのです。 一方、ラテン系や東洋系の人々が住む土地柄は、人間を怠惰にします。土地の雰囲気はソフトで温和で、人々の気力を弱める性質を持っています。したがって人々は遊びを愛し、安易な道を選び、働くことに熱心でなくなる傾向があります。 したがって溢れる活力を持ち、身体を温めるためにエネルギーを使わなくて済むので、彼らの強靭さは別のところにはけ口を求めます。そのはけ口になるのは五感を楽しませることです。そのため、黒い毛を持つ人々は極寒に住む人々に比べると、熱烈で、移り気で、感覚的で、バランス感覚に欠けるところがあるのです。 黒い毛の持ち主は、熱と温かさを持っています。活力に溢れ、それを分け与えることもできます。また満ちあふれる健康を遊びのために使うことを好みます。ただし理解して欲しいのは、毛の色が黒いすべての人が、フランス人やスペイン人や東洋人の気質と欠点を持つわけではないことです。 黒い毛は確かに強靭な活力と温かく、情熱的な性格を持つでしょう。ただしわが国では、その性格の背後に北欧人的な気質が隠されていることが多いのです。そういう人々はより実際的で、有り余る活力を活動的な分野に注ぎます。 しかしながら黒い毛が手に見られるときは、それを見逃してはいけません。鉄分が多く強靭な方であり、どのように色が生まれるか、どのような性格になりやすいかをも覚えていてください。これらの事実を覚えていれば、黒い毛の意味が分かるわけです。 手の上に灰色や白い毛を見つけることもあります。白い毛は毛管の中に鉄分がいっさい含まれていないことを示します。灰色は少し鉄分が入っているのです。白い毛は持ち主の活力が標準よりもかなり減少しており、毛嚢にブロンド色を作るほどの鉄分も供給されていないことを示しています。 色がなく、白だけが残されているということは、活力が通常よりもかなり低下していることを示しています。ただし珍しい例外として、恐怖に襲われて白くなった場合と、強烈な頭痛が原因の場合があります。このようなケースの場合は、問題の原点を見つけることが可能ですが、のちほどこの章で触れます。 手に灰色の毛を持つ人に出会ったら、毛の先端の色に注目してください。先端が黒か赤でさらに皮膚のきめが若々しいならば、すぐに金星宮を見なければなりません。金星宮が平坦でたるんでおり、たくさんの線や斜線がないでしょうか。さらに幅の広い白い感情線に鎖がたくさん見られるのではないでしょうか。このような状態がすべてあるならば、あなたの前にいる方は、疲れ果てた放蕩者です。 手に灰色の毛があり、その原因が年齢にあると思ったときは、手のひらの裏の皮膚を調べてください。しわが多い、滑らかな茶色の年寄りの手でしょうか、あるいは若さを感じさせる手でしょうか? お年寄りの手ならば、毛が灰色なのは年齢のせいだと結論できます。 若々しい皮膚なのに手の毛が灰色なら、有り余る活力が失われたのです。金星宮をみるとこの事情がはっきりします。 毛が白くなる原因が衝撃にある場合は、頭脳線に破断や「島」が見られます。 毛の色の原因が頭痛による場合は、頭脳線が小さな斜線で細かく分断されています。あるいは頭脳線に多くの「島」状態が見られます。衝撃が原因の場合は、切断が一ヶ所で起こりますが、頭痛の場合は、小さな線で継続的に切断されているのです。 毛の色が赤いときは、その方に、鉄分の化学混合が大量にあることを示しています。赤い色を検討するときには、常に粗い毛か、上品な毛かを見ます。赤い毛は興奮しやすい性質を示していますが、毛が粗いときにはその傾向がさらに強まります。 この色は熱しやすい気質を示し、興奮しやすく、口論になることが多く、わずかな刺激を受けただけでも怒りを燃えあげる傾向を示します。毛が上品ならば、興奮は一時的なもので終わるでしょう。しかし、興奮がつづく間は暴力的です。 毛が粗い場合は、暴虐性、暴力的な気質を示し、怒りを陰湿に収めて復讐を求める性質があります。赤い毛は、常に興奮を示し、争いに喜んで巻き込まれる性向を示します。これを通常は「激しやすい」と言います。このような方は上品にはなれません。 とび色の毛(赤褐色)はたいへんに褒められ、かつ愛されますが、黒い毛の温かさと情熱に、赤い毛の激情が加わったものです。この混合により、毛が黄金の輝きを持つとび色になります。素晴らしい釣り合いですが、この毛の持ち主の気質が悪い時は、要注意です! 表面の下で、炉が燃えているからです。 一般的なルールとして、手の毛は、他で観察したことを確認するために使います。例外は、顧客がカーテンの陰に隠れていて、手しか見ることができないときです。この場合は手の毛を見ることによって、多くを判断することになります。(第9章おわり) |