第13章 こぶだらけの指
顧客の手を観ると、滑らかな指と、こぶだらけの指があることに気がつくでしょう(写真55)。滑らかな指と、こぶだらけの指はまったく正反対の種類の人々を示しています。 滑らかな指は若い人に多く見られます。こぶだらけの指は、熟年に属します。これは絶対的なルールではありませんが、こぶのある指は哲学的な素質を示します。これが生まれつきの気質だと、若いときから関節が発達します。しかし、多くの場合、年齢とともに人々は分析的になるので、こぶだらけの指はどちらかというと熟年の方に多く見られるのです。 指によっては、最初の関節のこぶだけが発達していることもあります。最初の関節のこぶを手相家は「知の秩序(メンタル・オーダー)」の「こぶ」と呼びます。つまり知的均整がとれているかどうかを示します。 別の指は、二番目の関節のこぶが発達しています。これを「物の秩序(マテリアル・オーダー)」と呼びますが、すべての秩序、たとえば事務所や家庭を整頓することを好むことを示しています。 両方の関節に「こぶ」があるのは、「知と物」の両方の秩序を持つことを示します。この方の行動は遅くなります。何事に関しても注意深く考え抜くからです。さらにすべての行動に知的・物的な整然さが見られます。 彼らはすべてをルールに基づいて判断します。判断は整然とした知性と物体の立場から下します。つまりすべてを分析し、すべての疑問を理屈で解決しようとします。その場合、根本まで分析し、細かい要素まで追求します。つまりこぶだらけの指を持つ方は、分析的で理由を探り、探求心旺盛で、深く考えます。それがこれらの人々の特質です。 彼らが何かを真実だというとき、それは問題をまず聞いて、考え抜き、理解した後のことです。かれらはすべての発言を、整然とした知性に照らし合わせて検討します。さらに彼らは常識と第2関節のこぶで見られる実際的な理屈で、自らの立場を構築します。 彼らは情熱に流されることも、衝動的な行動を取ることもありません。すべての事柄を徹底的に調査して、考え抜くのです。彼らは真実を追求する哲学者です。軽薄な動機で分析をすることはありません。彼らは事実に到達することを求めます。したがって滑らかな指の人ほど素早い反応はしません。なぜなら物事の根底を見極めようと必死だからです。彼らは探求の結果得られた事実にしたがって行動します。 このように分析的性向があるため、こぶだらけの指を持つ方は、感情的にはなりにくく、感傷に動かされません。彼らを導くのは理由(頭脳)であって衝動(心)ではありません。こぶだらけの指を持つ方は、突然、何かに夢中になるようなことはありません。彼らには考える事柄と、考える時間を与えなければなりません。そして彼らの探求の結果に、任せる他ないのです。 あなたに趣味や、やりたい計画があっても、彼らがあなたの考えにすぐに賛同し、一緒にやり始めると、期待しないほうが良いでしょう。あなたの望みを強く表明し、彼らに考え抜く時間を与えるのがよいのです。 こぶだらけの指を持つ方は、勤勉家です。彼らは人生を歩むのに、衝動やインスピレーションに頼りません。彼らが頼るのはよく整理された頭脳に蓄積された情報です。必要なときが来るとその情報を使います。このためにこぶだらけの指をもつ方には、科学者や歴史家が多いのです。ロマンチックな物語を書く作家はいないでしょう。 こぶだらけの指を持つ方は、エネルギーがあり常識が豊かだと感じさせるところがあります。彼らが哲学的な結論に達するには、学びと労働が必要です。こぶだらけの指を持つ方は、独創性のある推理をすることが多いのですが、それを正しいと確信したら、迷うことがありません。 宗教に関してはクリスチャンであることも多いですが、無神論者も多いでしょう。なぜなら彼らは、何かを信じるのに多くの証拠を必要とするからです。彼らは理性的・実証的であった聖トマスのような人々です。懐疑派であり、確信を持つこともありますが、それには証拠を自ら確認することを必要とします。何かの存在を証明するのは、なにも無いことを証明するよりも難しいものです。したがって証拠が不十分だと結論すると、この方々は無神論者になります。どちらの立場に立とうと、彼らは心の底からそれが正しいと信じています。 彼らは哲学的で分析的です。理屈を大事にし、真実を調査し探索します。正直でエネルギーに溢れ、頑固な思索家で、疑い深く、結論に達するまでに時間がかかります。また忍耐強く組織的です。したがって、彼らは周りの世界を常にチェックしていますし、あまり物事が早く進み過ぎるのを予防します。 生命の流れは指の先端から知性をもたらすことを思い出してください。その流れが、最初の関節、つまり「知の秩序」で停止されたと考えてください。「知の秩序」がその流れを理解して、通過させるまでに時間がかかるのです。次に第2の関節である「物の秩序」に来て、そこでも流れを理解して通過させるのに時間がかかると考えてください。このように見ると、哲学的なこぶを乗り越えるのがいかに大変か、知的にイメージが浮かぶと思います。 滑らかな指も、こぶを発達させることがあります。私は、理性が発達したそのような指をたくさん見てきましたが、熟年になると多くなります。だから私は、若い人よりも熟年の方にこぶだらけの指がよく見られると言ったのです。これらの人々は衝動的に判断するのをやめて、分析して理性的に判断をするようになってきたのです。 多くの人々がこぶだらけの指は、スポーツや肉体労働のためにできると思っています。だが、これは真実ではありません。物事を分析する習慣がこのような指を生むのです。分析的・理性的なすべての方が、著名な科学者になるわけではありませせん。このような考え方はしないでください。ガスの配管工にも理性的な人々がいます。この方がたは、人生でかかわっている事に関して、賢人のように注意深く、すべてを分析しています。 私は極めて滑らかな指を持つのに、厳しい肉体労働を長年続けてきた方々を知っています。労働では、こぶのある手は生まれません(写真20)。知的活動が生むのです(写真55)。 私はこのことに関して徹底的な調査を行いました。なぜなら、手相鑑定の正確性について、疑う人々が、最初に疑問を呈するのが、この点に関してだからです。 手に「知の秩序」のこぶしか見られるならば(写真56)、知的な心、組織立った考え方、注意深く整然とした思考方法を示しています。ただし、これが言えるのは、こぶの大きさが正常な場合です。知的なシステムが働き過ぎることもあります。そうなると、奇想が目立ち、時には頭がおかしいのではないかと、思われてしまうことがあります。 あるとき私は、「知の秩序」のこぶが異常に発達した方に会いました。私はこのように目立つ手や指を見ると、探求する習慣があります。そこでこの方とも、いろいろ会話を始めました。彼は極めて知性が高く、高い教育を受けていました。話しているうちに、彼は世界のビジネスを一つの経営の下に統合するという計画について、語り始めました。 紙の上ですべてを計算し尽くし、確実に実現できると信じていました。人々は彼をクレージーだというでしょう。しかし、過去数年間の、信託銀行などの動きを見ると、彼の考えもそれほど異常ではないのかもしれません。 それはともかく、彼は巨大な「知の秩序」のこぶを持っていました。ところがこの方には第2関節のこぶがなく、個人的な身なりにもまったく興味を持っていませんでした。知的な発達が物的な発達を排除しているのです。これではバランスがとれていません。 第2関節の「物の秩序」がよく発達している場合は(写真55)、この方の物に対する方法を示しています。この方は家を整理整頓して清潔に保つでしょう。事務所も清潔に整理整頓するでしょう。この方は物質的なことすべてに対して注意深く組織的です。身なりは小奇麗ですが、服は古くてすり減っているかもしれません。毎日の生活も習慣も規律正しい方です。しかし指の先端が四角ならば組織に押し流されるタイプです。 指にこぶが見られたら、次は指の先端を見てください。四角状の先端であれば、こぶだらけの指に、四角い先端の特質を加味してください。四角状の先端の場合、この方は規律に厳しい親方です。このかたは主人であれ、ワイフであれ、雇用人であっても、狂信的な官僚主義・形式主義でしょう。 ヘラ状の指の先端をもち、第一関節にこぶがある方は、頑固なタイプで、極端な場合には偏屈です。 覚えていて欲しいのは、生命力の閃光が指の先端から入るとき、ヘラ状の先端で、さらにこぶがあると、抵抗があり、入りにくいことです。その結果、この方は極端に現実的な性向を持つのです。 とがり状や円すい状の先端ならば、こぶの鋭さが和らぎます。したがって、最上の組み合わせと言えましょう。これがこぶのある指の理想です。哲学的な厳しい傾向に理想主義が少々加味されるからです。円すい状の先端とこぶの多い指を持つ方には、宗教的な方が多いものです。なぜなら円すい状の先端は、分析的な懐疑心に少々の理想主義を加えるからです。これは、積極的になんでも当然として信じ込む、唯一の組み合わせです。 ヘラ状と四角状の先端とこぶが重なる方は、唯物主義に捕らわれるでしょう。彼らは触れたり、見ない限り、信じようとはしません。したがってこの組み合わせの方々は、懐疑派です。 こぶのある指を鑑定する前に、指の密度も検討してください。ソフト、あるいは軟弱なかんじがするときは、分析力も軟弱です。こぶのある指なので、学ぶことや研究に熱心だという前に、指が硬いかあるいは柔軟性を持つかを確認してください。柔軟性のある指はなかなか見られません。こぶのある指を持つ方の心は、伸縮性に富んでいないからです。彼らは労働と研究によって結果を得ます。柔軟な発想や閃きからではないのです。 一目でこぶの多い指だと感じるなら、こぶが相当目立つことを意味しています。あまり目立たないならば、こぶのある指だとは診断しないでください。大きく膨らんでおり、指がゆがんでいるならば、こぶが目立つと診断してください。膨らみが指の左右だけでなく、裏側にも存在し、まるで骨を取り巻く指輪のようになっていたら、こぶが発達し過ぎています。そうなるとこぶのよい性向が消えてしまいます。このような発達の仕方をすると、第一関節が内側に曲がり、硬い心が支配的になります。柔軟性が欠乏し、頭脳は硬く伸縮性がありません。つまり新しい考えを持つことができず、死ぬまで同じことを続けます。 (第13章おわり) |
写真20
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