Shun Daichi
  • Home
    • Shun Daichi
  • Writing
    • 神々の失楽園
    • ノーム・チョムスキー
    • ヤンガードリアス彗星激突
    • カッパドキア地下都市
    • トルコ ギョベックリ・テペ遺跡の謎
    • グヌング・パダン巨石遺構
    • 魔術師の神々
    • タイ王国のゆくへ 4 Feb. 2014
    • What I have learned in the last 40 years
    • Civil Warism and Harmonism
    • デウイとの五〇〇日 The 500 days with Dewi
    • The Seishin Chousoku Method of Breathing 塩谷式正心調息法
    • ピーターパンの世界(1) The World of Peter Pan: Part One
    • ピーターパンの世界(2) The World of Peter Pan: Part Two
    • 高松塚古墳石室解体にみる文化庁の体質 Takamatsu-zuka Ruins
    • ジョー・マクモナゴが福島原発を遠隔透視 Fukushima & Joe McMoneagle
  • Translation
  • NPq
    • Hiroki Koide
  • Kitombo Weekly
    • 奇跡を起す心の力 >
      • 著者からの個人的メッセージ
      • 第一部 >
        • 1.あなたはなにか?
        • 2.あなたが持つ不思議な力
        • 3.神の国はあなたの中にある
        • 4.信念の魔力
        • 5.選択肢は無限にある
        • 6.決断の不思議な力
        • 7.誰でも最も気持ちの良い人や場所に惹きつけられる
        • 8.「創造的な想像」の不思議な力
        • 9.想像力は愛と信念に影響される
        • 10.祈りと許しの不思議な力
        • 11 あなた自身を、許すこと
        • 12 他人を許すこと
        • 13 過去を許すこと
        • 14.運命を許すこと
        • 15 自己分析と再教育
        • 16 あなたのなかの創造する力
        • 17 心の治療の準備
        • 18 いやす力
        • 19 積極的信念への段階
        • 20 心の治療の技術
      • 第二部 >
        • 21 体を健康にする心
        • 22 経済を安定にする心
        • 23 修養のためになる心
        • 24打ち寛ぐ心
        • 25対人関係に成功する心
      • 26力強い人格をどう築くか
    • 27新しい習慣をどう作るか
    • 28若さを保つ心
    • 大地舜 今週の疑問 >
      • 2001年 >
        • 日本人 1〜43
        • こどもはどう育てたらよいのか
        • テロと欧米の二重基準 
        • 心はどこにあるのか
        • 「気」に対する認識はどう変わるか
        • 日本の伝統の源泉
        • 自民党はいつ潰れるか
        • ナルシストとのつきあい方
      • 2002年 >
        • ミャンマー旅行記 
        • 歴史の闇に「埋もれる世界」
        • ミクロネシア・ポナペ島探検記 
        • 南インド 
        • 台湾の海底遺跡と巨石遺跡
        • マルタ諸島の巨石神殿を造った謎の文明 1〜2
        • カンベイ湾に9500年前の都市が水没 1〜5
        • 与那国の海底構造物 1〜3
        • ラスベガス
      • 2003年 >
        • 国際派ビジネスマンの旅行術 
        • 南半球からの視点 1〜22
        • 謎の地底神殿ハイポジウム 
        • イラク戦争と第4次世界大戦の始まり
        • ベルツの日記
      • 2006年 >
        • サッカーはフェアなスポーツか
        • アメリカの底力・日本のチャンス
      • 2007年 >
        • 『神の手』に罪はなかった 1〜5
        • 世界の奇景・チョコレートヒル(フィリピン)
      • 2010〜2011年 >
        • タイ王国
    • 手相術の科学 The Benham Book of Palmistry >
      • 第一部 手相学 >
        • はじめに
        • 第1章 基本 >
          • 手相学から見た手の地図
        • 第2章 人間の駆動力
        • 第3章 手の姿
        • 第4章 手の肌理(きめ)
        • 第5章 手の密度
        • 第6章 手のしなやかさ
        • 第7章 手の色
        • 第8章 爪
        • 第9章 手の毛
        • 第10章 手の全体 >
          • 手の三つの世界
        • 第11章 指の全体
        • 第12章 指の先端
        • 第13章 コブだらけの指
        • 第14章 滑らかな指
        • 第15章 長い指
        • 第16章 短い指
        • 第17章 親指 >
          • 3つの指節
        • 第18章 宮と指
        • 第19章 木星宮
        • 第20章 土星宮
        • 第21章 太陽宮
        • 第22章 水星宮
        • 第23章 火星宮
        • 第24章 月宮
        • 第25章 金星宮
      • 第二部 手相術 >
        • 第1章 線の基本
        • 第2章 線は何を示すか
        • 第3章 独立した印
        • 第4章 年齢
        • 第5章 感情線
        • 第6章 頭脳線
        • 第7章 生命線
        • 第8章 影響線
        • 第9章 愛情線
        • 第10章 土星線(運命線)
        • 第11章 太陽線
        • 第12章 水星線
        • 第13章 金星帯
        • 第14章 その他の線
        • あとがき
      • 「手相の科学」検証と実際 今井英人
    • 三神たけるのお伽秦氏 >
      • 2001 雅楽etc
      • 2002 凧揚げetc
      • 2003~ 鏡餅etc
    • カルタゴ皇帝ゴンの世界 >
      • ジュラシック ミステリー
      • アボリジニ 進化の鍵を握る人々
      • ネアンデルタール
      • 水の惑星 新ガイア理論
      • 楽園を求めた縄文人
      • 海の人類史
      • 最後の審判
      • 邪馬台国と製鉄
      • 怖い話
      • 不思議な夢の世界
      • 五大文明
      • 茂在プロジェクト
      • 縄文字の謎 ETC
    • 21世紀文書館 >
      • 遠そうで近い国・近そうで遠い国   木本博美 >
        • 2001
        • 2002
      • 機織の娘たち  木本博美
      • 網中裕之 >
        • りんちゃん
        • げんさんの住処
      • 萬亀眼鏡の東京散歩  飯森好絵 >
        • 2001 March to July
        • 2001 Aug. to Dec.
        • 2002 Jan. to July
        • 2012 Aug. ~
        • In English
      • 海賊の話 裏小路 悠閑 >
        • 海賊とは
        • お金の仕組みの摩訶不思議
        • エレン・ブラウン
        • Untitled
        • Untitled
        • Untitled
        • Untitled
  • Sing Out Asia
  • Blog
  • 29心配や恐怖をどう取り除くか
  • 30劣等感をどう取り除くか
  • 31取り越し苦労を止める法
  • 32あらゆる事態に配当を産ませる法
  • 33朝の黙想
  • 34夕の黙想
  • 35私は在る、できる行う
  • 36健康と幸福と繁栄の鍵


ネアンデルタール

1. 哀れなコサック兵

1856年、ドイツ・デュッセルドルフ近郊のネアンデル渓谷の洞窟で不思議な人骨が発見された。 ネアンデルタール人の名称の由来にもなった輝かしい大発見なのだが、この骨がネアンデルタール人という別種の人類と認められるまでには長い長い論争の歴史がある。
 石灰岩の採掘作業を行っていた鉱夫によって発見された人骨は、当初ホラアナグマの物と思い込んだ鉱夫によって無造作に保管されていた。 しかし、かろうじて捨てられること無く、発見物はまとめて地元の高校教師フールロットのもとに運ばれた。
 アマチュアの博物学者でもあったフールロットは、届けられた化石の中に大変古い人骨が混じっている事に気づき、すぐさま発見場所へ出向き残りの部分の発掘に取りかかろうとした。 だが残念な事に、時すでに遅く発掘場所の洞窟は、完全に堆積物が取り除かれ整地されていた。
 しかし、この人骨の特殊性を見過ごす事が出来なかったフールロットは、ボン大学の解剖学教授シャーフハウゼンのもとに骨を送り、更なる科学的な研究を依頼する事にした。
この奇妙な人骨の頭骨には、低く傾斜した額、前後に長い頭蓋、眼窩上に見られる巨大なアーチ状の骨隆起など一見して判別できる原始的な特徴があった。 最 初、絶滅した大型の類人猿のものではと考えたシャーフハウゼンだったが、後の詳細な研究から、現在のドイツ人以前の野蛮で獣的な先住民族のものと結論付け た。 このように、現在の進化論的考えの一歩手前までこぎつけていたシャーフハウゼンの説は、当時のドイツの生命科学分野を支配していたウィルヒョウに よって完全に否定されてしまう事になる。
 進化論的考えに猛烈に反対していたウィルヒョウは、この人骨の持つ骨盤や大腿骨の変形は、この人物が幼少時代より乗馬をしていた証拠で、左腕の骨折跡の 予後が悪く、いつも苦痛に顔をしかめていた為、眼窩上に骨隆起が出来て頭蓋骨が変形したと主張した。 又、この人物がクル病にかかっていた事も、変形の一 因だとした。
 シャーフハウゼンはこれらの研究結果より、この人骨の持ち主はナポレオン戦争末期のコサック騎兵の哀れな脱落兵のものだと結論付けたのだった。
 今考えれば、このように無謀な仮説がまかり通った事自体が信じられない事だが、当時のドイツではシャーフハウゼンの権力は絶大で、脱落コサック兵説が盲目的に信じられるようになった。
参考文献及び資料

  • ネアンデルタールの謎 ジェイムズ・シュリーブ著 角川書店
  • 石器時代文明の驚異 リチャード・リジリー著 河出書房新社
  • 現代人はどこからきたか 馬場悠男編 日経サイエンス社
  • 人類の祖先を求めて 馬場悠男訳 日経サイエンス社
  • 最後のネアンデルタール 高山博訳 日経サイエンス社 
  • 歴史読本ワールド 大疑問人類誕生 新人物往来社
  • エンカルタ百科事典2000 マイクロソフト社
Web Sites
  • Yahoo! News Anthropology and Archaeology
    http://fullcoverage.yahoo.com/fc/Science/Anthropology_and_Archaeology/
  • CNN Interactive News
    http://www.cnn.com/
  • The "Wild Man" of Central Asia
    http://www.unmuseum.org/alma.htm

2. 獣人ネアンデルタール

 一方、イギリスではより広い仮説が論議されるようになりシャーフハウゼンの脱落コサック兵説は部が悪かった。 このような論議のもと、1863年英国ク イーンズカレッジのキング教授らによってはじめてネアンデルタール人と言う名前が使用される事になる。 同じ1863年には、ネアンデルタール人と同様の 特徴を持つ人骨がジブラルタルで発見されていた事が判明し、ネアンデルタール人が、単なる病気の脱落兵ではありえないことが明らかになった。 更に 1886年にはベルギーのスピー洞窟から2体のほぼ完璧なネアンデルタール人骨が発見され、現代人とは異なる古い形質の人類が太古のヨーロッパに存在した と言う考えが浸透していった。 しかしこの考え方と同時にネアンデルタール人が、毛むくじゃらで腰をかがめて歩く野蛮で下等な獣人というイメージが定着し ていく事になる。 スピー洞窟のネアンデルタール人骨は、非常に頑丈な四肢骨と大きな関節を持っていた。
 この人骨を解剖学的見地から詳細に分析を行ったフレポンとレーヘは、腰をかがめた類人猿的2速歩行をしていたと言う結論を導き出した。
 そして、フランス・ラシャペローサンの洞窟で発見されたネアンデルタール人の老人が決定的に古典的なネアンデルタール人のイメージを形作る事になった。
 パリ自然史博物館の古生物学教授ブールは、1911年から1913年にかけてラシャペローサンの老人の解剖学的、系統学的研究を、膨大な量の包括的な報告書としてまとめ上げた。
 しかし、残念な事だが彼の研究の前提は、ネアンデルタール人が現代人に比べ如何に劣っているかと言う事を徹底的に証明する事だった。
 彼によって、醜く腰をかがめて、しかめ面でヨロヨロと類人猿のように歩くネアンデルタール人の復元図が広められていく事になる。 彼はネアンデルタール 人の脳の大きさにはまったく言及することなく、獣的な側面のみを強調する事に全霊を傾けた。 こうして、ラシャペローサンの哀れな老人は、長い間腰をかが めた獣人の代表として君臨する事となった。
 1891年、1892年には、デュボアによってインドネシアでピテカントロプス(ジャワ原人)の化石が発見され、人類の進化説に新しいページを加える事 になるのだが、これにいたってはブールによって、ただの巨大なテナガザルとして切り捨てられる事になる。 ネアンデルタール人が人類とは異なり劣った獣人 だと考えたブールにとっては、ネアンデルタール人の若干の類人猿的特長だけで、人類新化の折れた枝に仕立て上げるには十分だったのだ。

3. 現代のネアンデルタール人像

こうして、ネアンデルタール人が腰をかがめて歩いている姿が定着していくことになる。
 最近まで百科事典などには、猿人、原人、旧人、新人の順に徐々に腰がまっすぐと伸びていく姿がよく描かれていた。 新人になってはじめて完全な直立二足歩行になるのだ。
 このような姿は、まさにブール等による間違った復元図を元に考えられた物であり、現在では完全に否定されている。 人類は頭脳の発達の前に完全な二足歩 行を行っていたのだ。 決して十分な量とは言えないが、アフリカで発掘された数々の化石や足跡を調べた結果、すでに猿人の段階で腰をまっすぐ伸ばし歩いて いた事がわかっている。 ましてや、ネアンデルタール人にいたっては、完全に直立して歩いていたことに疑いの余地は無い。
  ネアンデルタール人は、身長は高くないが非常に頑丈な骨格と筋肉質のずんぐりした体型で、頭骨には古い特徴を備えているにもかかわらず、脳容積は現代人の 平均約1350mlを上回る約1400mlもあった。 しかも、この脳容積はネアンデルタール人全体の平均で、後期のヨーロッパのネアンデルタール人で見 ると1700ml以上もあったのだ。
ヨーロッパで最初に発見されたネアンデルタール人だが、その後、中近東、コーカサス、中央アジアと続々と周辺からの発掘が相次ぎ、広い範囲に分布していた ことがわかってきた。 ヨーロッパ以外で発見されたネアンデルタール人は、区別する意味で類ネアンデルタール人と呼ばれる事になっている。 しかし、本質 的には変わりないため一般的にはすべてを含めてネアンデルタール人と総称されている。
 ネアンデルタール人は発達した特徴的な石器文化を持っていて、ムスティエ石器文化と呼ばれている。 彼らは、すでに火を使いこなし死者を埋葬する習慣を持っていた。
 レバント地方のシャニダール洞窟で発見されたネアンデルタール人の埋葬後の土からは大量の花粉が検出され、死者に花を手向けた後と思われている。
 このように、現在ではネアンデルタール人は現代人とほとんど変わらない能力を備えていたと思われているが、優れた芸術の痕跡だけはいまだ発見されていな い。 しかし、ネアンデルタール人が洞窟壁画などの芸術をまったく行っていなかった証拠も無い。 単に時代が古いだけに芸術の痕跡が失われてしまっている だけの可能性も十分考えられる。
 現実にネアンデルタール人は、オーカーと呼ばれる色の付いた鉱物の顔料を死者の墓に撒いたり、死体に塗ったりして飾りつけ行うなど、芸術感覚を持っていたと思われる。
 ネアンデルタール人に言葉を話す能力が有ったかどうかは、いまだ結論が出ていない。
 しかし近年、言葉を発するのに重要な役割を果たす舌骨が発見され、現代人と変わりないことがわかった。 よって少なくとも肉体的には言葉を発する能力があったと思われるため、すでに言語能力を獲得していた可能性は非常に高い。

4. 現代人との関係

猿人、原人、旧人、新人と言う分類の中でネアンデルタール人は旧人に分類される。 ネアンデルタール人と入れ替わりヨーロッパに登場したクロマニオン人は解剖学的に完全な現代人で新人に分類される。
 現在ではネアンデルタール人を含め世界各地で見つかっている旧人レベルの人類をまとめて古代型ホモサピエンス、クロマニオン人以降の現代人を現代型ホモサピエンスと呼ぶことも多い。
 なぜなら、ヨーロッパでは、約2万8000年前に最後のネアンデルタール人が滅びクロマニオン人へ明確に入れ替わった為、旧、新という分類が成り立つが、中近東では状況が異なっている事がわかってきたからだ。
 レバントのカフゼー洞窟で発見された現代型ホモサピエンスの人骨は、最新の年代測定の結果、約9万年前のものである事が判明したのだ。
 ここで従来考えらていた進化モデルは見直しを迫られることになる。 人類学者の多くはレバント付近の中近東で古代型ホモサピエンスから現代型ホモサピエ ンスに進化したと考えていたのだが、現代型ホモサピエンスが9万年前の地層から発見されたという事は、少なくとも古代型ホモサピエンスのネアンデルタール 人と現代型ホモサピエンスは、6万年以上も共存していた事になる。 ことレバントに関していえば、現代型ホモサピエンスの後にネアンデルタール人が移り住 んできた事もわかってきた。
 この事にのみ関して言えば、前述のブールがネアンデルタール人は人類進化の折れた枝にしかすぎず、現代人とは別系統だと言う主張はあたっていたわけだ。
 レバントでの発見は、これまで考えられてきたそれぞれの人類の文化的側面も見直しを迫られる結果となった。
 レバントの現代型ホモサピエンスはネアンデルタール人に特徴的な文化と思われていたムスティエ石器文化を使用していたのだ。 更に、最近ヨーロッパから は、クロマニオン人特有の物と思われていた、より進んだ石器文化に属するオーリニャック型石器が、ネアンデルタール人と共に発見されている。
 つまり、今まではネアンデルタール人はムスティエ石器文化をクロマニオン人はより進んだオーリニャック石器文化を持つと分けられていたのだが、これらの 違いはただ単に時間的に古いか新しいかの違いだけで、どちらの人類も同じ時代においては、まったく変わりの無い文化を共有し生活をしていたのだ。 ネアン デルタール人と共にオーリニャック型石器が最近まで発見されなかったのは、ただ単にオーリニャック石器文化が普及し始めた頃には、すでにネアンデルタール 人は少なくなっていたからにすぎない。
 このように、古代型ホモサピエンスと現代型ホモサピエンスの関係は単純に、旧、新という時間的な直線関係には無い事がわかる。 最近ではプロト・ネアン デルタール人と分類される、より古い時代の古代型ホモサピエンスが世界各地で発見されているが、これらプロト・ネアンデルタール人こそ本来の古代型ホモサ ピエンスで、ネアンデルタール人は特殊化した形質の異なる別系統のホモサピエンスと考えるほうが妥当である。 しかし決してブールの主張するように形質的 に現代人よりはるかに劣る脱落した人類ではない。

5. 寒冷適応

能力的には現代人とほとんど変わらないネアンデルタール人だが、解剖学的には明らかに現代人と異なる特徴を備えていた。
 まず、ネアンデルタール人の体型だが、身長はさほど高くない。 しかし異常に頑丈な骨格を持っていて、ずんぐりむっくりの筋肉質の体型であった事が知られている。 ちょうど、小柄で筋肉質の力士を連想させる体型だ。  更に頭骨には、数多くの違いが見て取れる。 ネアンデルタール人の頭蓋骨は、前頭骨(額)が低く傾斜しており、頭蓋全体が前後に引き伸ばされた形をしている。 又、眼窩の上には眼窩上隆起と呼ばれる骨隆起が発達している。
 顔は、突顎と呼ばれ、口の部分が前に出っ張っていて、オトガイと呼ばれる顎の出っ張りがほとんど無い。 顎部と歯は頑丈で大きく、巨大な咀嚼能力を備えていたものと思われている。 又、鼻は非常に大きな団子鼻で、突顎とあいまって巨大な顔面を形作っている。
 しかし、大きいのは顔だけでは無く、その頭蓋容量も前述したようにかなりのもので、全体的に体に比べて頭でっかちであった事がうかがえる。
 ネアンデルタール人は、どうしてこの様な特徴を持っているのか? 人類学者は、寒冷適応の結果だと考えている。
 ネアンデルタール人の生きた当時のヨーロッパ地方は、氷河期の真っ只中にあり、分厚い氷河に覆われていて現在のヒマラヤ地方のような気候だったからであ る。 極端に寒冷な気候に合わせネアンデルタール人独特の特徴が形作られていき、氷河の拡大と共に生息範囲を拡大していったのである。
 では、具体的にどのような点が寒冷適応なのだろうか。 まず、ずんぐりむっくりの体型であるが、この体型では体の表面積が少なくなり、体温を奪われにくく熱を内部に蓄えやすくなる。
 次に巨大な鼻と大きな顔面は、呼吸した時の冷えた空気が肺に到達するまでに、出来るだけ体温で温まるように適応進化した結果だと思われている。
 又、最近ではネアンデルタール人は現在の北ヨーロッパ人と同じように白い肌に碧眼、金髪であったとも言われている。

6. 絶滅

一時は中近東、中央アジアまで勢力を広げたネアンデルタール人だったが、約2万8000年前を最後に絶滅してしまった。 ネアンデルタール人と入れ替わり にヨーロッパに現れたのが現代型ホモサピエンスのクロマニオン人である。 クロマニオン人は急速にヨーロッパ全土に広がり、現代ヨーロッパ人の直接の祖先 になったと思われている。
 いったい何故、ネアンデルタール人は絶滅してしまったのだろうか。
 ヨーロッパではネアンデルタール人と入れ替わりにクロマニオン人が現れた事から、現代型ホモサピエンスとの生存競争に敗れたと考えられる。 ネアンデル タール人とクロマニオン人との間でまったく混血が起こらなかったとは言い切れない。しかし、中間型の特徴を明確に示す化石はほとんど発見されていないた め、混血したとしてもほんの一部に限られると思われる。
 現代型ホモサピエンスであるクロマニオン人との生存競争に敗れたからには、いずれかの点でクロマニオン人と比べ生存に不利に働く理由があったはずだ。
 人類学者の多くは、ネアンデルタール人の知的能力そのものがクロマニオン人と比べ劣っていたからだと考えている。しかし、上記で述べた事実からわかるように、決してネアンデルタール人の知的能力が劣っていたことが、絶滅の原因では無いことは明らかだ。
 では、クロマニオン人と比べネアンデルタール人の生存に不利に働いた事とはいったい何だったのだろうか。

7. 肉好きの頭でっかち

ネアンデルタール人の絶滅の原因としては、さまざまな仮説が唱えられているが、その中から信憑性の比較的高いと考えられるものを検討してみよう。
まず、第一に上げたい絶滅の理由に頭の大きさがある。 人間の頭の大きさは、生物学的に見て限界に近い。これ以上頭が大きくなると出生時に産道を通る事が不可能になるのだ。
 新生児の頭には泉門と呼ばれる頭蓋骨の隙間がある。中でも頭頂部に位置する大泉門と呼ばれる隙間は大きく、脳表が脈打っているのがハッキリわかるほど だ。何故、大事な脳を守るはずの頭蓋骨に隙間がある状態で生まれてくるのか? それは、すでに人間の頭の大きさでは、まったく変形しない硬い頭蓋骨で覆 われていると、産道をくぐりぬけることが出来ないからだ。
 頭蓋骨がつながっていない事により、頭が変形可能な為、かろうじて産道をくぐりぬけて誕生することが可能なのである。
 したがって、クロマニオン人と比べ大きな頭を持っていたネアンデルタール人は、クロマニオン人以上に難産だっただろう。出生時に起こる異常率は母子共 にネアンデルタール人の方が高かったはずだ。このわずかな出生率の差が、ネアンデルタール人がクロマニオン人との生存競争に敗れた理由になりうる可能性 は十分に高いと考えられる。絶滅寸前のネアンデルタール人の頭蓋容量が極端に肥大化していた事も絶滅を早める原因になったはずだ。
 次にネアンデルタール人とクロマニオン人の食性の違いが考えられる。オックスフォード大学のポール・ぺティット、北イリノイ大学のフレッド・スミス、ワシントン大学のエリック・トランカス等の研究によると、ネアンデルタール人の食事の90%以上は肉であったと言う。
 動物の骨にはその食生活に応じた放射性同位体が記録され、この値を調べる事により大まかな食性が判明する。この研究者グループが、クロアチアで発見さ れた約2万8000年前のネアンデルタール人の骨に含まれる窒素15と呼ばれる放射性同位元素の値を調べたところ、異常に高い値であったことが判明した。 この事は、ネアンデルタール人の食生活がライオン並の肉食であった事を示している。
 一方、同様の手法を用いた研究より、クロマニオン人は雑食性で魚を多く摂取していた事が判明している。
  つまり、優秀なハンターであったネアンデルタール人は大型の動物を狩り尽くしてしまい、絶滅へ向かったと考えられるのだ。 対照的にクロマニオン人は、雑 食性であった為、環境への適応能力が高く毛長マンモス等の大型の動物が絶滅したあとのヨーロッパでネアンデルタール人と入れ替わるように個体数を伸ばして いった。
 研究者の中には、魚を多く食したクロマニオン人は魚に含まれる脳の発達に貢献する物質DHAを多く摂取したため頭脳が発達し、ネアンデルタール人を絶滅 に追いやったと考えている者もいる。しかし、それなら世界中でどの民族よりも魚を大量に消費する日本人は、ずば抜けて頭脳が発達していてもおかしくない はずで、この説の信憑性ははなはだ疑わしいと言わざるをえないだろう。

8. ブロンドヘアー

そしてもう一つネアンデルタール人の絶滅を考える上で重要な事がある。 今一度思い出してほしい! ネアンデルタール人は、氷河期の気候に適応し特殊化した人類だったのだ。 寒冷適応で何か忘れていることは無いだろうか? そう!「体毛」である。
 考えてみてほしい、寒冷適応の最たるものは体毛の発達なのだ。氷河時代には毛長マンモスや毛長サイが生息していた。それに比べ熱帯地方に生息する現 在の像やサイにはほとんど体毛は無い。体毛があるか無いかの違いは、原始的か現代的かの違いではなく、本質的には寒冷地に適応したか、熱帯に適応したか の違いにしかすぎない。
 つまり、ネアンデルタール人と現代人の違いの出発点は寒冷地に適応したか、熱帯に適応したかの違いなのである。極端な寒冷気候氷河期に適応し特殊化し たネアンデルタール人は、当然体毛を発達させたと考えられるのだ。ヨーロッパ出身のネアンデルタール人だ! きっと全身がブロンドヘアーで覆われていた のだろう。
 現代人に体毛が無いのは、衣服を着用するようになったからではなく、熱帯適応した人類だからなのだ。逆に現代人は衣服を着用するようになったため、体 毛の無い状態のまま熱帯を抜け出し世界各地に広がっていけたのだ。いったん衣服の着用を覚えた現代人には、もはやどんな寒冷気候においても体毛を発達さ せる必要が無くなった。したがってモンゴロイドのように寒冷適応したと思われる人種にも体毛が無いだけなのだ。
 ここでネアンデルタール人と現代人に大きな差が生じてくることになる。人工の体毛「衣服」を身に付けた現代人は、気候の変動にあわせ着脱可能なのに対 し、ネアンデルタール人は、どんなに暑くとも、身に付けた分厚い毛皮を脱ぐことが出来なかったのだ。 ここでも環境適応能力の差ガ出てきたわけだ。これ らの環境への適応能力の差は、生存競争を生き抜く上で大きなハンデとなったはずだ。
 以上述べた三つの要因が複雑に絡み合い、ネアンデルタール人は絶滅に向かった物と思われるのだ。

9. 知性よりルックス!

ネアンデルタール人と現代人は、ヨーロッパ・中近東で非常に長い期間同時に存在したことは明らかだ。では、混血は起こらなかったのだろうか。
 大規模な混血が起こらなかったことだけは、明らかだ。この事は、最近のミトコンドリアDNAの変異による研究からも裏付けられている。なぜ、能力的 には変わりない2種類の人類の間で混血がほとんど起こらなかったのだろうか。 長い間、最大の謎とされてきたが考えてみれば自ずと明らかになる。 どんな に美男・美女のネアンデルタール人がいたとしても、全身を剛毛に覆われていれば現代人の祖先にとってまったく魅了は感じなかっただろう。 逆にネアンデル タール人から見てみれば、まったく毛の無いつるつるの肌を持った現代人は、ただ気持ちの悪い存在でしかなかったのかもしれない。 結局、多くの人間にとっ て、パートナー選びの決め手となるのは今も昔も、知性ではなくルックスなのだ。
しかし、混血がまったく起こらなかったと言い切ることも出来ないだろう。(何時の時代にも物好きはいるものだ!)
テネシー大学のアンドリュー・クラマー、ミシガン大学のミルフォード・ウォルポフ、サンホセ・ステート大学のトレーシー・クルメット等の研究グループによ ると、レバントの現代型ホモサピエンスとネアンデルタール人、及びヨーロッパの現代型ホモサピエンスの頭蓋骨の比較結果から、ある程度の混血が起こった事 は明らかだとする研究結果を2001年1月発行のQuaternary Internationalに発表している。
 ネアンデルタール人の住んでいたヨーロッパ地方の人種が現在最も体毛が濃いのは、ネアンデルタール人の遺伝子が多少影響を与えていると考えられるのではないだろうか。
 一部の人類学者は、アングロサクソン系のドイツ人が、非常に頑丈な骨格を持っている事実も混血の証拠としてあげている。
 やはり、多少の混血はあったと見るのが正解だろう。 しかし、アジアやアフリカの無毛のホモエレクトスや古代型ホモサピエンスは、環境適応能力が高いた めお互いに行き来しながら徐々に同化して現代型ホモサピエンス一種となったのに対し、毛深いネアンデルタール人との混血は限定的で、やがてネアンデルター ル人は絶滅したと考えられる。

10. 雪男

しかし、ネアンデルタール人は本当に一人残らず完全に絶滅してしまったのだろうか。
 今でも、人里はなれた未開の地に移り住んでひっそりと生き延びているとは考えられないだろうか。 実はその可能性があるのだ!
 ネアンデルタール人とは、氷河期の極端な寒冷気候に適応した、体毛のある人類なのだ。
 極端な寒冷気候と体毛のある人類で何かピンとこないだろうか? そう、ヒマラヤの雪男イエティである。 イエティの目撃報告は、非常に古くからある。  又、中国の野人やコーカサス地方のアルマスなど毛深い獣人の言い伝えも、イエティと同種の生きものをさすと考えられる。 雪男と言うといかにも野蛮な獣人 と言うイメージがある。 しかし、いかに知性に満ちていようと、全身を剛毛で覆われていれば、現代人にとっては野蛮に見えてしまうだけで、実際に野蛮だと 言う証拠はまったく無い。 ちょうどSF映画スターウォーズに登場するチューバッカのイメージである。 いかにも怖そうな毛むくじゃらの獣人の姿をしてい ながら、完全な直立歩行で人間とまったく同じことが出来る姿だ。
 雪男イエティの目撃報告には知性が感じられるものが多い。 イエティが人間を襲ったと言うことを聞いた事はあるだろうか? 実際、イエティに襲われた例 はほとんど無い。 勇猛果敢なハンターと思われるイエティが何故よそ者の人間を襲わないのか。 それは、優秀な近代兵器を持つ人間には太刀打ち出来ないこ とを良く心得ているからに他ならない。
 又、イエティの目撃例が極端に少ないのも、意識的に人間を避けているからと考えて間違いないだろう。
 更にイエティと同種と思われるコーカサス地方のアルマスにいたっては、ネアンデルタール人の生き残りとしか考えらないような記録がいくつも残されている。

11. アルマス

アジアで目撃される獣人というとイエティと野人が良く知られているが、もっとも存在の可能性が高く目撃報告も多いのが実はアルマスなのだ。 13世紀には すでにアルマスの記録が残されており、コーカサス地方ではあたりまえの存在になっていた。 数々の目撃例から、アルマスは道具を使用する能力を有し、何ら かのコミュニケーションをお互いにとっていると言う。
 かつてハンターによって捕獲され「ザナ」と名づけられたメスのアルマスはメイドとして使われていたと言う記録も残っている。 十分に人間と同じ生活をする能力があったわけだ。 おまけに人間との間に子供まで設けたらしい。
 1925年には旧ソビエト連邦の軍医が、死んだアルマスと思われる毛深い人間についての詳細な研究報告を行っている。 記録によると、アルマスは筋肉質 の中肉中背で、解剖学的には現代人と変わりないように思われたと言う。 しかし、頭部には明らかに特徴的な違いが見られたらしい。 報告によると眉の部分 には大きな眼窩上隆起が見られ、傾斜した額に大きな下顎と平たく大きな鼻の特徴があるという。 まさに想像されるネアンデルタール人像と完全に一致するの だ。
 更に、1941年にはコーカサスでドイツ兵と戦っていたロシア軍のもとにパルチザン(ゲリラ兵)によって、奇妙な捕虜が連れ込まれた。 ロシア軍司令官 カラペティアンによると、捕虜は裸で全身を長い毛に覆われており、明らかにロシア語を理解できない様子だった。 カラペティアンが体毛を採集しようとした ときも、捕虜は抵抗する様子は見せずただ怯えていたという。 捕虜は、暖房の効いた部屋では、汗が滴り落ち異臭を放ったため、納屋にとじこめられた。 最 終的に、この捕虜は脱走兵として処刑されてしまったらしい。
 ネアンデル渓谷での発見当初、ドイツ人によりロシアのコサック兵とされたネアンデルタール人だったが、今度は、ロシア人によりドイツ兵と間違われて捕らえられ処刑されたわけだ。 何と皮肉な運命のめぐり合わせだろう!
これらのエピソードから明らかなように、アルマスやイエティ、野人等のアジアの獣人は限りなくネアンデルタール人の生き残りである可能性が高いのだ。
 いずれ、雪男の存在が正式に確認できれば真相は明らかになる事だろう。 雪男が見つからなくとも、氷河に氷付けになった毛むくじゃらのネアンデルタール人がマンモスに槍を突き刺した状態で発見される日がくるかもしれない。
 そのときは、世界のおもな人種が、黒色人種、白色人種、黄色人種、毛長人種と再区分される日となることだろう。 きっと、そう遠い未来ではないはずだ。