第10章 手の全体
あなたが次に目を向けなくてはいけないのは、手全体がどのように見えるかです。何を見るかというと手のバランスです。あるいはある場所が比較的重くあるいは軽く感じるかどうかです。 この検証をする一番良いやり方は、顧客の方に手のひらを上に向けて、両手を目の前に差し出していただくことです。このときに手の指も自然に伸ばすようにさせてください。 指に柔軟性のある方は、指を深く裏側に曲げるかもしれませんが、それはやめさせてください。自然にまっすぐと指を伸ばしてもらってください。手の柔軟性についてはすでに解説しました。 このようにすれば手の全体が分かります。次に手のひらに比べて指が充分に長くて、バランスがとれているかどうかを見てください。指が手のひらに比べて短いでしょうか。あるいは長過ぎる感じがするでしょうか。つまり上から下まで手を眺めて、バランスがとれているかを見るのです。 このような手の検証を、手相術では『手相の3つの世界』を見るといいます。3つの世界とは「知性」「世俗的な日々の生活」「動物的な本能という本源的な気質」のことです。人々はこれらの3つの要素に支配されて行動をしています。 手の全体を検証することによって、この3つの世界のどれが顧客の行動を支配しているかを推測します。 古くから、霊魂(soul)・身体(body)・と精神(spirit)、心(mental)・物質(material)・観念(abstract)、空気・火・水などと3区分されます。このような3区分ないし3位一体は、よく見られますが、それぞれ『手相の3つの世界』に対応しています。 これらの3区分は、エーテル(ethereal:心霊・天上)的な要素、物質的な要素、そして本源(baser)的な要素という考え方に基づいています、 手相を見る場合は、顧客が「知性」「世俗的な日々の生活」「動物的な本能という本源的な気質」の3つの、どの要素によって支配されているかが大事です。 上位世界 手の全体を見て、上部にある指の部分は「知性」を示しています。手の中央部分は指の付け根から、月宮から金星宮の上部までであり、「物質」、つまり「世俗的な日々の生活」を示します。そして(写真34)の手のひらの線から手首までが「動物的な本能という本源的な気質」を示します。これが手相における3つの世界の場所です。 さて、あなたの目の前に出された両手を見てください。もしも指の長さが目立つならば、この方は「知性」が支配的要素です。真ん中の部分が発達しているならば、ビジネス世界、あるいは「世俗的な日々の生活」が支配的です。もしも手のひらの下の部分が支配的ならば、その方は動物的な本能の強い方で、感覚的ですが次元の低い世界で生きています。 「知性」は人を高尚にすることはだれでもご存知でしょう。したがって、「知性」が勝っている人は、学究的な知的な仕事が向いています。あまりにもこの傾向が強く、他に特徴がない方は、観念だけの心的高揚の領域で生きることになります。観念的な方面ばかりに集中して、実際的な面が不十分だと、実社会で必要な事柄への対応がおろそかになります。 多くの知的な人や学者や学生が、ビジネスが下手なのはこのためです。こういう方は貯蓄の観念がないことすらあります。このようなかたは手相学でいう「上位世界」に住んでいますが、あまりにも実際的な感覚が欠乏していることは、この現実的で功利的な現代社会においては不幸なことだといえるでしょう。 中位世界 「中位世界」は実際的な世界です。手のこの領域は野心、冷静、知恵、芸、抜け目なさ、攻撃性、抵抗力などの質を観る場所だからです。これらは恐るべき資質だと思われるかもしれませんが、今世紀の世俗的な世界で闘うことを考えると、それほど強烈なものではありません。 顧客の手相を観て「中位世界」が発達しており、「上位」と「下位」の世界を圧倒しているようなら、その方は、ビジネスライクで実際的な生活をしており、日々の生活の知恵に富み、物質的な成功を大事にする世界に住んでいます。したがって商業では地位を得、政治、戦争、農業など、あらゆる実際的な職業に適しています。 このような人々は、頭脳だけの人々を馬鹿にしています。お金もうけに大いに意欲を燃やし、物質的な世界に生きています。 下位世界 もしも手の「下位」が発達していたら、その方は、程度の低い基本的な欲求の領域で生きています。この方は感覚的な喜びを得ることに最も熱心です。とくに手が粗いならば、その傾向が強いでしょう。高尚なことやレベルの高いことには興味がないでしょう。 この方はお金を持っていても、洗練された使い方を知りません。この方は美を愛しますが、低俗な華美なものに惹かれるでしょう。食事も好きですが暴飲暴食、鯨飲大食をするだけで、美食家ではありません。時には抜け目のないこともありますが、それはきつねの狡さのようなものであり、堂々とした高尚な心を持つ方の才能とは違います。この方は見せびらかすのが好きで、家の中は贅沢にしていますが、趣味はよくありません。けばけばした色を使い、調和が取れていないのです。 この方は低俗で、趣味はすべて平凡です。洗練された育ちのよい人々の間で、この方は紛れもなく粗野な人物です。高尚な心と思考を持つ人々の間で、いかに馬鹿らしく見えるか、本人は気がつきません。 この方は極めて世俗的で、趣味、考え方、愛は粗雑で、悪趣味で、平凡です。この方は下層の世界で生きているのです。 あなたはこのような3つの世界が発達した手を、たびたび見ることになるでしょう。決してありえないとか、ありそうもない手であるというわけではないのです。 バランスのとれている手 また、手の全体像を観ても、どの世界が支配的なのかが分からない手にもたびたび出くわすでしょう。実はこれが最も運のよい方の手なのです。なぜなら、手のバランスがよいことを示しているのですから。人間の性格を語る場合、バランスがとれていることは、もっとも望ましいことでしょう。 つまり、「知性」「世俗的な日々の生活」「動物的な本能という本源的な気質」のどれもが支配的でないわけですから、この方の人生の見方は偏っていないのです。この方は賢く、知的で、実際的で、慎重で、平静で、洗練されています。それぞれの世界の基礎的な知識が充分に備わっているからです。 したがってこの方は、すべての事柄を純粋に頭脳の立場から見るだけではなく、その上に常識を加えることができます。これは、人生において成功するのに必要です。このように手の平を見て、3つの世界のバランスがよくとれている人は、実社会で偉大な成功をするのです。 しかしながら、注意深く、すべてが首尾一貫しているかどうかを観る必要があります。たとえば怠慢な性向が見られるならば、いかに能力が優れていても、多くのよい考えを持っていても、成功が破壊されてしまいます。たとえ3つの世界のバランスがとれていても、柔らかい手ならば、それが壊されてしまう可能性があります。 手のバランスがとれていないなら、どの世界が一番強烈かを観てください。そしてその世界が全体を引っ張るほど強いかどうかを判断します。時には一つの世界が、他の世界よりもわずかに勝っていることがあります。その場合は、このかたはこの「世界」のあり方を最も「好み」ますが、必ずしも「その世界」に従うほど、その「世界」が勝っていないということなのでしょう。 ある「世界」がどの程度、支配的になっているかを判断するには、優れた感覚と経験が必要です。はっきり言えるのは、「中位世界」が発達していない限り、世俗的な成功は難しいということです。「知性」は栄光を勝ち取るかもしれませんが、お金は別でしょう。時には「動物的な本能という本源的な気質」が豊富な方でも、金銭的に成功するかもしれません。 上位の2つの世界が結ばれていれば、強靭な知性で金銭的な結果を得るかもしれません。下位の2つの世界が結ばれれば、荒っぽい職業で金持ちになるかもしれません。 「中位世界」がなくて「上位」と「下位」の世界だけならば、知性にすぐれていますが、低俗な方で、常識の影響が少ないことになります。このような組み合わせは、成功する人々を生みません。したがって、上手にバランスのとれた手かどうかを観るには、まず「上位」を観て、「下位」を観て、それらと「中位」の組み合わせを観ることです。 (10章おわり) |